ママにとって、気になる発達のマイルストーンとして、発達の順に並べてみます。私もこれができた!次ができた!と一喜一憂していました。
「首がすわる」「寝返りができる」「お座り」「ハイハイ」「つかまり立ち」「歩き始め」「初めてのことば」などがあります。
以下のような心配事を抱えていませんか?
他の子どもと比べて言葉が遅い、落ち着きがない、友達と遊べないなど心配、遊びのルールが分からず、友達とけんかになるなど心配、具体的な心配事を挙げるとキリが無いくらいに出てきます。
乳幼児期における、ママ・パパの最も大きな関心事の1つとして、音声言語の獲得度合い(他のお子さんと比べてどうかしら・・・?、うちの子は、言葉が遅いんだけど。。。。)について心配されている方が非常に多いだろうと思っています。ウチはあまり気にしていませんでしたが、ママ友のお子さんでも言葉が遅くて心配されていたことを思い出します。
当記事では、言葉の発達・獲得のために重要な4つの発達基盤を取り上げ(色々な分け方があることも存じておりますが、今回の記事では4つの発達基盤の観点で見て見ました)、月齢毎に特徴を示すことで一般的な発達段階について理解することを目的にしています。
更に次回の記事テーマは、今回の内容を受けて、「共同注意」の成立を示すことにしたい。この「共同注意」は言語発達の基盤となる大変重要な考え方です。
具体的には、「共同注意」場面でのママ(パパ)の関わりに注目し,乳児の言語発達におけるママの関わりの足場作りとしての機能について実際のママの行動事例を交えて報告したいと思います。
記事の前提事項
当記事は、以下の麻生先生、花坂先生の論文の特に前半部分を引用しながら、最後に記載の関連文献で補足や私の考えを交えながら構成しています。ご興味がある方は、原文の論文に当たって見ていただければと思います。発達心理学は近年学際的なアプローチもたくさん取られており、研究の進歩も早い領域です。
特に乳幼児の子育て中のママ・パパに向けて多少なりとも参考になれば、との思いから関連論文や書籍を読んだ内表を記事にしており、ブログとして投稿する頻度が少ないことをお許しください。
「乳幼児期に求められる「言葉」の教育―幼稚園での教育実践を視野に―」麻生 良太(大分大学教育学部附属教育実践総合センター(発達心理学))・花坂 歩(大分大学教育学部言語教育講座(国語科教育学)) 令和元年 10 月 22 日。役職は発表当時のものです
乳児期の 4 つの発達的基盤
音声を聞く(音声知覚)
「言葉の理解には,人の話す言葉を聞いて,その音の違いを聞き分ける音声知覚の発達が必要であり、受精 24 週には聴覚器官が完成しています」
そのことを示す現象としては、例えば,生後まもない子どもでも,人が話す言語音と機械音との違いを認識し,人の言語音のほうにより長く注意を向けることができます。
生後 6~8 ヵ月:あらゆる音韻を聞き分けられる(違いを聞き分けているのであって自分で運用できることを意味していません。日本語の基本 的音節を音節に分解できる概略的年齢は、4ー4歳半です)
生後 9 ヵ月:母語で区別されない音の違い,日本語でいえば l と r の違いなどは無視し,母語で区別される音についてのみ,正確に聞き分けられる
生後 10 ヵ月以降:「マンマ」「ワンワン」などの子音と母音のいろいろな音節パターンが連続する多様喃語(なんご)を発する。
抑揚や強弱の他,あたかも何か話しているような何かを伝えようとしているような長い喃語も聞かれるようになる。= ジャーゴン(「ジャルゴン」とも表記。会話様喃語)
ジャーゴンは、「新造語が頻発し,まったく意味のないことばの羅列を話してしまう様子.例:『あがかちぐべぼらにぐたほ』と話してしまう等(引用a)
子どもが聴いている能力を見ているので、外見からは、上記の区分けに当てはまるのかどうかは判断できないだろうと思います。喃語を発するかどうかはママ・パパでも聞き取ることができますね。
この中で記憶に留めていただきたいことは、大人のママやパパから見ると、乳幼児の発する「言葉」「言語」「喃語」などは極めて幼稚で未熟なものに見えます。
ママやパパも子どもさんと同じように幼児語で話しかけることがあると思います。
スキンシップを含めたコミュニケーションの場面では重要なこともあります。
しかし、実際に乳幼児が理解している言葉は多く、聴く力もかなりあります。ぜひ、正しい大人の発音で正しい言葉を伝えてあげてください。ちなみに、耳で聞いて理解できることばは「理解語彙」と呼んでいます。
音声を発する(音声表出)
「音声を聞き取る音声知覚能力のほかに,構音能力を身につける運動的側面の発達が必要」
「構音」:医学的用語であり、言語学上では「調音」と言う。一般には「発音の操作」と理解される。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)私たちの理解としては、「発音」と同じと考えてよい。「構音障害」は、ことばの発達のつまずきとして世の中のママ、パパたちが子どもの発達に関して非常に高い関心を持っています。
生後 1 ヵ月頃
反射的に叫ぶような声(叫喚<きょうかん>発声)のみ。これは、不快な刺激(空腹・渇き・痛み・突然の大きな音)によって発せられる反射的な叫びが大部分を占める。(参照A)
生後 3~6 ヵ月:クーイングと呼ばれる,喉を鳴らすような母音を発する。機嫌良くリラックスしている時に発せられ、「クークー」というハトの鳴き声に似た音を出すことから,クーイングと呼ばれています。
生後 6 ヵ月以降 :バババのように母音と子音が円滑 につながり,明確に音節が反復される。これが言語音のもとになり,規準喃語(子音+母音の複数の音節からなるもの)と呼ばれる
「クーイング」 と 「喃語」は何が違うのかしら?
「クーイング」は、「アー」とか「クー」とかいうリラックスした声を発するようになることです。一方で、「喃語」は、音節が複数あることと,各音節が子音+母音の構造を持っていることでクーイングと区別される。例としては、「ぶぶぶぶー」「ばば」「まんま」
1歳頃:初語を発する。ただし,日常的によく聞く単語については初語の前から理解しており,語彙の理解と語彙の産出との間には数ヵ月ほどの開きがある。
早くて生後 10ヶ月頃、遅くとも1歳半頃までには意味のある言葉を話すようになります。(参照A)
コミュニケーション(対人関係)
「言語を獲得する過程では,乳幼児とママやパパが同じ活動をしながらコミュニケーションを図り,乳幼児が物や事象の意味を理解する手助けをすることが大切」です。
赤ちゃんとママ・パパなどの第三者との間では,言語を伴わない「やりとりーコミュニケーションー」が生後直後から繰り返し行われます。表情・仕草・発生・視線を通して交わされる慈愛に満ちた「やりとり」は,やがて赤ちゃんが周囲の環境へ働きかける際の基盤になる行為です。
生後 1 ヵ月頃:上述の「音声を発する(音声表出)」の中で伝えた叫喚<きょうかん>発声は、空腹や排せつなどの不快を感じて “ 泣く ” と、ママはそれに応えて授乳したり、ママやパパは、おしめを替えたりする。「 泣く」 といった子どもの表現方法に対してママとパパが受け入れて、反応してくれることを日常生活の中で繰り返しています。
赤ちゃんの要求や表現に対して反応するというコミュニケーションの元々の形が作られていきます。(参照B)
生後 4 ヵ月頃:様々な音の発声が可能になる。音声や表情で自分の欲求を示し,それに応答する他者との間で情緒的な絆を形成
生後 6 ヵ月頃:喃語や反復喃語も表出することから,まるで言葉を発しているように見える
生後 7 ヵ月頃:子どもがママの意図を理解しており,ママが反応することによってママの意図への理解がより深まる
生後 9 ヵ月頃:発達において重要な三項関係(自分と他者と対象物)の認知が始まり,対象物を媒介として他者とコミュニケーションを取ることが可能になる。これは後に発達する対話の基礎となる。
物の認知(対物関係)
「言葉を獲得していく過程では,いくつかの事物に共通の意味を見出して同じグループの物として扱ったり,同じ名前で呼んだり,同じやり方で反応したりする能力が必要」
生後 5 ヵ月頃:ママ・パパなどとのさまざまな対人的なつながりを赤ちゃんがママやパパと共有した経験し、安全地帯であるママ・パパはあくまでも自陣の安全な陣地として確保しつつ、対象になる物に注意を向けるようになります。赤ちゃん自身の意思で周囲の状況に対して興味の範囲を広げるようになります。お目当てのおもちゃに向かって、ハイハイして突き進んでいくことなどです。
ママやパパなど赤ちゃん自身を守ってくれる養育者との関係を「二項関係」と呼んでいます。
生後 9 ヵ月頃:上記の「コミュニケーション(対人関係)」にもあるように物や人を介した「三項関係」へと広がっていきます。ここでの「物」とは、「有形の物体としての物」だけではなく、風がふいてカーテンが揺れるという「事」であっても良いんです。「有形の物体としての物」にもなっていない「テーマ」「主題」と呼んでもいいものでもあるのです。
1歳頃:「言葉(記号)」と「言葉(記号)によりあらわされる物」が対応していることに気づき,少しずつ語彙を増やしていく
物の名前や特徴を記憶するとともに,「ある物を,それとは異なる物であらわすはたらき」である象徴機能を使って,物のイメージを広げていく(参照D)
まとめ
乳児期の 4 つの発達的基盤から、乳幼児の言語獲得の段階を追いました。月齢毎の目安の時期は記載しているものの実際には、個人差が非常に大きいのも事実です。
言葉が遅れていた子どもさんが、国立大学にストレート入学して研究者になろうとしていることも事実として身近に経験しています。
最後に記載しましたが、一方で発達障害のお子さんもいるのも事実ですし、早期に対応することでそのお子さんの人生は大きく変わります。
それを気にして発見して適切に対応するのも、ママ・パパの重要な役目です。
次回は、具体的なママの行動についてお伝えしたいと準備しておりますので、よろしくお願いいたします。
最後まで目を通していただきありがとうございました。
おわりに。発達障害について
発達障害は、ママ・パパの子育ての方法、やり方の問題ではありません。自責にしないでくださいね。生まれつきの脳の機能障害です。「アスペルガー症候群」という用語も耳にされてことがあると思います。これも含めて、若者の対人関係の問題など、コミュニケーション障害です。
「障害のある子どもに対する支援のあり方や方向性は様々に議論されてきているが、これらの子どもたちの主体的な発達と共生の支援を円滑に行うためには早期発見・早期支援が重要」(引用b)
であり、早期発見、治療をすることで改善する可能性が高いと言われています。子どもが幼いうちは、初めての子育てにとまどう親も多く、どこに相談したらよいのかわからないこともあります。ですから、子どもの発達をいろいろな角度から確認できる乳幼児健診の場はとても貴重な機会です。このような不安や気付きがあれば、専門家への相談をお勧めします。
「発達障害情報・支援センター」のホームページをご確認ください。
引用・参照文献
(引用a) 医療法人育生会篠塚病院 北関東神経疾患センター患者様向け情報誌 「みどり」2015年7月1日発行
(引用b)「障害のある子どもの早期発見・早期支援の重要性について―音楽療法の事例から見えてくること―」園田 和江 宮崎学園短期大学紀要 2018年
(参照A)「幼児・児童心理学」谷田貝公昭、 林邦雄、 成田国英 編集 2001年4月
(参照B)「聴覚障害教育の手引」文部科学省 ”第3節 聴覚障害児に対する言語指導” 令和2年3月
(参照C)「発達初期の理解語彙の獲得(Ⅰ)― 質問紙調査(1)―」 発達科学研究教育センター 田中規子、藤永 保、 阿部五月 発達研究 第 16 巻 2001年
(参照D)「子どもとことば」岡本夏木 1982年 岩波書店